お元気にしていますか?
シルフィール・ラブル・モノネナです。
皆さんのおかげで、モノネナも大分復興に向いました。
あの節は本当に感謝しています。モノネナの王族、ゼッケルハイスの王族、そして国民を代表させてお礼を言わせてください。
まだ治世ができるほどの力は取り戻していないのですが、国民たちの援助もありそれも間もなく可能になると信じています。
私にはそんな気質はまったくないので不安ですが・・・。
そうそう。クリスさんはとてもモノネナ復興に貢献なさってくれてるんですよ。
ボランティアで子供たちのお世話や、緑化活動など・・・助けられてばっかりですね。
ルルフォールさんは自分の家で、治癒術に関する研究を続けてらっしゃるそうです。次元の歪みが手がかりね、って張り切ってらっしゃいますよ。ルルフォールさんらしいですね。
傷を癒す力なんて素敵ですよね。我々もささやかながら支援させて頂いています。
ラースドさんは王様が直々に謝礼をとおっしゃったのですが、それをお断りされました。
別に依頼されてやったわけじゃない、とのことです。こちらからすれば、何かお役にたてれば嬉しかったのですが・・・。
西の孤島は今は全面封鎖をしております。いつの日かあの研究所を取り壊す日もくるでしょう。
一部の研究者の言葉では、あれほどの技術を取り壊すのはもったいないとの声も上がりましたが、この悲劇を繰り返さないためにも残しておくわけにはいきません。
セルウィン・ダークスの論文も機密図書にて厳重に保管してますので、どうぞご安心を。
またいつの日か顔を見せにこちらにいらしてくださいね。
そのときは是非、また私の歌を聴いてください。
それでは、お体に気をつけて。
「シルフィールも元気そうでよかったね」
ティラミスが手紙を読み終えた。
あの旅が嘘みたいに、随分と平和な日常が続いていた。
もう、オートマターに襲われることも不可解な災害が起こることもない。
空は広く澄み渡り、太陽の光は万物を照らし、濃い緑の葉がキラキラと輝いている。
「クリスやルルフは相変わらずだけど、ラースドが謝礼を断るなんて意外だったな」
ロスリート村の離れにある平地、そこにひとつの墓石がたてられていた。
立派なものなんかではなく、ひとつの石柱がたてられただけの墓。
本当は馴染んだ土地の方がいいのだろうけど、遥か昔に亡くなってしまっていた身寄りがない彼にはここで我慢してもらうしかない。
墓石の前にいた少年は、一本の花をそこに添えるとティラミスを振り返った。
温かい風が二人を通り抜けた。まるで初めて出会ったときのように。
「そろそろ帰ろうか、ティラミス」
ティラミスに差し出された手。銃剣を握ってまめがいっぱいできているけど、とても暖かい手。
彼女はその手をとるとにこりと笑った。
「うん!」
二人はロスリート村の方へゆっくりと歩き始めた。
ロスリート村にいただけではわからなかった、この世界。
嫌なこと、綺麗なこと、辛いこと、楽しいこと、すべてひっくるめてそれは忘れられない大切なものを得た。
この世界で必死に生きている人々。そして純粋に世界を憂う思い。
仲間なんて陳腐な言葉かもしれない。
そして・・・。
繋がれた手は、作られた命かもしれない。だけど、それは確かにぬくもりを持っている。
思い出を持っている。
この尽きないひとつの欲望によって―――・・・。