「おいー!!皆、こっち来てくれぇー」

ディアが茂みの中から声を発する。それぞれ捜索のためにバラバラに散らばっていたメンバーがディアのもとに集まってきた。

「これがエネルギー体じゃないのか?」

これ、とディアが掴んでいたもの。それは・・・。

シオンとアルミオンが顔を見合わせる。

「アルミオン、これって・・・」

「うん。ダークマジックストーンだね」

手の平サイズだが、そのどす黒く光る禍々しい石。間違いない。ダークヴォルマの力の器となっていたものだ。ダークヴォルマが消滅しても

石は残っていたんだろう。闇の力はもう集まっている様子はないが、石自身から十分なエネルギーが放出されている。

リヴァイアサンの豹変も、この石のせいだとしたら理解できる。

「じゃ、これをもってさっさと帰るか!時間もないんだろ」

石を大切にしまい、シオン達は来た道を引き返す。リヴァイアサンは未だにその体を倒したままでいた。

エネルギー体をもっているので近寄ってくるモンスターや獣の数は行きの2倍はあったが、足取りは軽いものだった。








「グレン、お前、オレが見ない間に随分強くなったんだな」

夜、リコリスのモンスターたちを護衛、そして代わり代わりの見張りで仮眠をとることにした。今がグレンとシオンが焚き火を囲んで見張り番中だ。

シオンが火に木をくべながら、静かにグレンに言った。

「まぁな。お前だけ強くなってるっていうのも癪だからな」

グレンも火を見つめたまま、返す。

「昔はよく一緒に森で狩りしたり、洞窟を散策したり、馬鹿やってたのによ、お前が旅から帰ってきて別人みたいに強くなってるのにかなり焦ったぜ。

・・・オレも強くなった気でいたが、負けてられねぇと思って毎日猛特訓した。でもお前にはどうしても、敵う気がしねぇ」

「グレンは十分強いじゃんか。今日のリヴァイアサンだってグレンがいないと・・・」

「そうじゃねぇよ」

シオンの言葉を遮り、グレンは続けた。

「力とか、剣術もだけど、お前はなんか・・・人間としてでかくなった気がする。旅で、楽しいこととか辛いこととかもあったんだろ?

それに捕らわれず、前に向って進んで行くお前がすごいとオレは思うわけよ。・・・て、あー・・・もー!!何いわすんだお前はっ」

「いてっ」

ぐしゃぐしゃと頭をかきむしった後、グレンは無意味にシオンの頭を叩いた。グレンが人を誉めるなんて滅多にない。きっと照れてるんだろう。

その時、背後からシオンの肩がポンと叩かれた。

「シオン、さっきからずっと見張りしてるでしょ。私と交代しよ」

微笑みながらそういったのは、メル。確かに、睡魔とはずっと闘っていたので素直にその言葉に甘えることにした。

「じゃあ、お願いな」

「りょーかい」

火のもとから、立ち去って行くシオンにひらひらと手を振るメル。その後、シオンが座っていた位置に腰を下ろした。

「なぁ」

と、意外にもグレンから口を開いた。メルもぽかんとしている。

「ん?何?」

「お前も、前、シオン達を旅をしてたんだろ?・・・その時のこと、教えろ」

「うっわ、それが人にものを頼む態度?」

メルがわざとらしく不服そうな声を出す。

「オシエテクダサイ。オネガイシマス」

グレンも対抗して、わざとらしいお願いの仕方である。

ふぅとため息を付いたあと、メルが話し出した。

「まぁいっか。私も皆と旅をしたのは遅い方だから、聞いた話とかになるけど・・・」



シオンが神に選ばれて、それをフィーナが迎えにきたこと。

旅の目的と、自分達の敵のこと。

アルミオンと、フィーナのこと。

セントラル王国のカルナとラフィスのこと。

リコリスのこと。

リースのこと。

メルとシオン達が出会ったときのこと。

そして旅の結末のこと・・・。




メルはできるだけ、細かく、かつ端的にことの事情を話した。いつもはふざけているグレンも、このときは静かにメルの話をきいていた。

一通り、話が済んだ後、グレンが第一に発した言葉が

「シオン、趣味悪りぃな」

これにはメルも噴出し、みんなを起こさないように静かに笑った。

「そーかなー?

・・・でも私も・・・今のシオンみて、強いなって思うよ」

焚き火がパチっと音を鳴らし、しんとした空気が流れる。



「・・・お前、『私も』ってことは・・・さっきの話きいてたな!?」

グレンが食らいつくぐらいの勢いで、メルに怒鳴る。

「やだなぁー。あんな大きい声で話してたら普通に聴こえるわよぉー。」

メルが、あはっと必死で取り繕っているのが垣間見える。話を変えようと、必死に目を泳がせている。



「あ、ほら。もう朝だよ!私みんな起こしてくるね!!」



メルは山間からうっすらと赤くなった空を指した。どうやら、随分話し込んでたようだ。メルは急いで立ち上がり、寝ている皆のほうへかけて行く。

と、数歩進んだところで再び立ち止まり振り替える。

「でも、そんな親友を支えてあげられるあんたも、十分すごいと思うよ」

メルは、それだけ言うと今度は立ち止まりもせず一目散に駆けていった。



「ったく。騒がしい女だな」

グレンも立ち上がり、朝食のための水を確保しに向った。






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